壺齋散人の 美術批評
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地獄への降下:死後の世界



中世の画家たちは、地獄の光景を描くことは多かったと思われるが、罪あるものが地獄へ落ちていく降下の有様を描いたのは、ボスが初めてだったのではないか。ボス以前にも、堕天使(反逆天使)の降下はイメージとしてあった。だが罪人の魂が地獄へ向かって降下していくのは、これが初めてだと思う。

この絵では、裸の罪びとたちが暗黒の中を落ちていき、それを魔物たちが途中で待ち構えている。所々光が漏れ出ているのが見えるが、それは地獄の劫火の光だろう。

画面はただでさえ暗いのに、長い年月にわたり色が重ねられてきた結果、非常に暗然とした色合いになっている。

なお、罪人ではなく、反逆天使の降下のテーマは、この後ブリューゲルやルーベンスも取り上げて絵にした。中世から近世にかけて、非常にポピュラーなテーマだったのだろう。

(パネルに油彩、87×40cm、ヴェネチア、ドゥカーレ宮殿)





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