壺齋散人の 美術批評
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玉ねぎのある静物(Nature morte aux oignons):セザンヌの静物画




「玉ねぎのある静物(Nature morte aux oignons)」と呼ばれるこの絵は、前掲の絵「ペパーミントの瓶(Nature morte à la bouteille de peppermint)」と構図が似ている。背景が広いこと、モチーフが左に偏っていることなのだ。背景が広いことでは、この絵の方がはるかに広いと言ってもよい。というのも、前掲の絵では、背景の壁の一部が窓のようになっていて、その分、だだっ広い感じを相殺していたのが、この絵では、窓も何もない壁が、寒色の色合いのまま、だだっ広く広がっている印象を与えるからである。

モチーフが左に偏り過ぎているという印象も、この絵の方が強い。前掲の絵では、左に偏っているモチーフ群の中心となる透明のフラスコが、画面全体の中心に位置しているのに対して、この絵の中では、同じ位置付けのボトルが極端に左に寄っている。そのため、構図全体が奇妙な不安定感に包まれている感じを与える。

構図の中の不安定な要素の強調は、セザンヌの特徴の一つと言えるが、こんなにも極端な形でそれが出ているのは、他に例がない。そういう点で、この絵には、セザンヌの実験精神を感じることができる。

モチーフ群のなかでボトルと共に強調されているのが題名にもなった玉ねぎだ。いくつかの玉ねぎから勢いよくシュートが伸び出ていて、それがボトルの静に対して動の要素を醸し出している。セザンヌには、このような要素相互の対立に着目するという特徴がある。

(1896-1898年、キャンバスに油彩、66×82cm、パリ、オルセー美術館)





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