壺齋散人の 美術批評
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カーテンと水差しのある静物(Nature morte avec rideau et pichet fleuri):セザンヌの静物画




1890年代の末に、セザンヌの静物画はその頂点に達した。構図と言い、色彩と言い、セザンヌが追求してきた絵画の理念が、もっとも完成した域に到達したといってよい。

「カーテンと水差しのある静物(Nature morte avec rideau et pichet fleuri))と題する1899年の静物画はその一例である。この絵とほとんど同じ構図の絵が他に五点あり、いずれも1890年代の末から1900年代の初頭にかけて描かれている。同じテーマを何度も描くことでセザンヌは、絵の完成度を高めようと考えたのかもしれない。

この絵には、セザンヌの静物画の特徴が遺憾なく盛り込まれている。まず、複数の視点。例えば、中央の皿は、右隣の皿よりも上からの視線で描かれている。それに対して水差しは、ほぼ真横からの視線と言う具合に。

画面の不安定性とか歪みという点については、テーブルが左に向かって傾いていること、テーブルの右サイドが歪んで見えるなどの工夫がなされている。セザンヌはこのようにわざと歪みをいれることで、画面に独特の動きを盛り込もうと考えたようである。

色彩も大胆になっている。それまでは、背景は寒色が主体だったものを、この絵では背景にも暖色を採用している。とりわけ、紫の使いかたが効果的だ。その結果、画面全体が、非常に暖かい雰囲気を漂わせている。

(1899年、キャンバスに油彩、54.7×74cm、ペテルブルグ、エルミタージュ美術館)





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