壺齋散人の 美術批評 |
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リンゴとオレンジ(Pommes et oranges):セザンヌの静物画 |
1899年に描かれた「リンゴとオレンジ(Pommes et oranges)」と題するこの絵も、やはり同年に描かれた「カーテンと水差しのある静物」(前掲)とほぼ同じ対象をモチーフとしている。ただ、アングルとモチーフの配置が幾分か異なっている。 まず、アングルについていうと、前掲の絵が、モチーフを乗せた台をほぼ真横から見ているのに対して、この絵では、左斜め上から見ているように描かれている。そしてモチーフを乗せた台は、白布によって大部分が覆われ、その輪郭が曖昧になっている。そのためモチーフ群は、あたかも白い布に乗って、空中に浮かんでいるような観を呈している。 モチーフの中心になるのは、中央に一つ孤立して置かれたリンゴだ。このリンゴを中心にして、その左手にリンゴの群、そしてその右上にはコンポートに乗せられた果物の群、さらにその横にある水差しといくつかの果物といった具合に、中央のリンゴを起点として時計回りに視線が誘導されるように工夫されている。 前掲の絵では壁にかかっていたカーテンが、この絵では、壁から外されて台にかぶされているように見える。このカーテン自体も暖色の組み合わせだが、その背後に僅かに覗いている壁も暖色で塗られ、絵全体が暖色の醸し出す暖かなハーモニーを奏でているようである。 前掲の絵とともに、セザンヌの静物画の頂点をなす作品だといえよう。 (1899年、キャンバスに油彩、74×93cm、パリ、オルセー美術館) |
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