壺齋散人の美術批評 |
HOME | ブログ本館 | 東京を描く | 水彩画 | 日本の美術| プロフィール | 掲示板 |
赤いヴェストの少年 セザンヌの肖像画 |
セザンヌはあるイタリア人少年をモデルにした絵を四点描いた。1888年頃のことだ。そのうち最も有名なのが「赤いヴェストの少年(Le Garçon au gilet rouge)」と題されたこの絵だ。他の三点も、赤いヴェストを着た少年を描いているが、ポーズはそれぞれ違う。それらはみなアメリカの博物館にある。 この絵の中の少年は、床几のようなものに腰掛け、テーブルの上に肘をのせてなにやら瞑想している。その雰囲気がなんともいえない。そこがこの絵を、セザンヌの肖像画を代表する存在にした所以だろう。セザンヌの肖像画の代表たるのみならず、油彩の肖像画のもっともすぐれた作品の一つに数えられる。 伝統的な画法からまったく離れた、セザンヌ特有の画法を感じさせる。遠近法をほとんど無視し、また明暗で立体感を表現しようともしていない。影らしきものはあるが、それは立体感の演出とは無縁である。あくまでも二次元の平面として構成されている。その二次元の平面のなかで、テーブルもカーテンも実際の形態とは別な形に再構成されている。 (1888-1890 カンバスに油彩 80×64.5㎝ チューリッヒ、ビューリー財団) |
HOME | セザンヌ | 次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |