壺齋散人の美術批評
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プロヴァンスの家 セザンヌの風景画




「プロヴァンスの家(Maison devant la Sainte-Victoire près de Gardanne」と称されるこの絵は、後期のセザンヌの画風がもっとも典型的な形であらわれた作品。荒々しいブラシワーク、色彩の強烈な印象、遠近法にこだわらぬ構図など、かれの後期の画風を特徴づける要素が強く見られる。

モチーフの家は、(フランス語のタイトルにあるように)サント・ヴィクトワールの南側にたつ孤立した民家で、ガルダンヌの町の近くにあるという。画面にはしかし、サント・ヴィクトワールもガルダンヌの町も見られない。背後の灰色の山は、別の山であろう。

家の右側の壁に光が当たっているから、画面右手が南の方角と思われる。だから、サント・ヴィクトワールは、その方向の先にあるのだろう。なお、この家は、画商のアンブロワーズ・ヴォラールが所有していたことがある。そのヴォラールの肖像画をセザンヌは1899年に描いている。

(1890年頃 カンバスに油彩 65×81㎝ インディアナポリス美術館)



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