壺齋散人の 美術批評
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町の上:シャガールの恋人たち




ベラとの結婚式の前後、シャガールはベラの単独肖像や、二人が一緒にいる絵を数多く描いた。第一次世界大戦中ということで、シャガールにも軍役の義務があったのだったが、軍隊への入隊は免除され、軍属の仕事に従事すればよいことになった。

「町の上」と題するこの絵は、シャガールがベラを抱えてヴィテブスクの町の上を飛んでいるところを描いている。

町の建物の一部にスポット的に暖色が施されているのを除けば、ほぼ寒色で塗られている。灰色の空をバックにした二人の衣装も、ブルーとグリーンと言った寒色だ。暖色好みのシャガールにしては、この絵の色遣いはちょっと変わっているといわねばならない。

やはり、戦争の影があるのかもしれない。戦争はナショナリズムを煽り立て、反ユダヤ感情も高まる。そうした排外的な空気を敏感に感じ取ったシャガールが、愛する妻を守ろうとして、重力から身を開放し、空高く飛んで行ったということなのかもしれぬ。

(1915年、キャンバスに油彩、49.2×70.6cm、ポーラ美術館)





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