壺齋散人の 美術批評
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結婚:シャガールの恋人たち




「結婚」と題する1944年のこの絵は、ベラの兄弟アーロンの結婚を描いたものだという。ベラは自分の回想録の中で、この結婚式の様子を陽気なタッチで描いているが、シャガールのこの絵からは、むしろ陰鬱な雰囲気が伝わってくる。新郎新婦は顔を見つめ合ってはいるが、あまり幸福そうには見えないし、周囲の人々の表情にも、溢れるような喜びが感じられない。

空中では、天使たちが楽器を演奏しているが、その表情にも明るさはない。祝福しているというよりは、新郎新婦の厳しい運命に同情しているといったふうな雰囲気を感じさせる。

シャガールは、東欧やロシアにおけるユダヤ人迫害の現実を知るにつけても、自分たちユダヤ人の運命について楽観できなかった。それゆえ、結婚を描いたこのような絵にも、そうした悲観的な雰囲気がもられることになった、というふうにも解釈できる。

(1944年、キャンバスに油彩、99×74cm、イダ・シャガール・コレクション)





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