壺齋散人の 美術批評
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ダヴィデ:シャガールの恋人たち




ダヴィデは、イスラエルの二代目の王として、ユダヤ民族繁栄の基礎をつくった人である。巨人ゴリアテを石で倒したり、竪琴を弾いて王サウルを慰めたりと、様々な伝説がある。だから、キリスト教圏では、芸術や文学の格好の素材となってきた。ミケランジェロのダヴィデ像は、その最も名高い例である。

この絵は壮年期のダヴィデを描いたものと思われるから、ダヴィデは既に王となっているはずだ。その王のダヴィデが竪琴を弾いている。聞かせている相手はサウル王ではなく、イスラエルの民のようだ。ダヴィデは、詩編の作者としても知られ、したがって立派な芸術家としての印象が強いので、壮年となってからもなお竪琴を弾いたとしてもおかしくはない。

シャガールは自分自身をこのダヴィデに重ねあわせたのではないか、とする解釈もある。ダヴィデの背後には、上方にヴィテブスクの街が描かれ、下の方に南仏ヴァンスの風景が暗示されているが、それはシャガールの生きてきた痕跡なのだ。

なお、この絵の中では、シャガールとベラ、シャガールとヴァヴァの組み合わせが描かれている。シャガールとベラは、ヴィテブスクの町の真下に、赤い天涯の下で祝福されているところが描かれ、シャガールとヴァヴァは、右手の空間に浮かんでいる姿として描かれている。

(1962年、キャンバスに油彩、180×98cm、個人蔵)





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