壺齋散人の 美術批評 |
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キリストの復活:エル・グレコの幻想 |
「キリストの復活」と題するこの大きな絵は、「受胎告知」とともに、ドニャ・マリア・デ・アラゴン学院聖堂祭壇の衝立を飾っていた絵と考えられている。まったく同じ構図の縮小したものがセント・ルイスのワシントン大学に保存されているが、これは受胎告知における大作とその縮小画と同じ関係にあるものと思われる。 キリストの復活は、西洋の宗教画の大きなテーマとなってきたものだ。それをエル・グレコは自分流儀に描き出している。異様に引き伸ばされた人体のプロポーション、赤、青、黄色と言った原色のコントラスト、そして光を有効につかった幻想的な画面の演出などがそれだ。 福音書によれば、キリストはゴルゴタで十字架にかけられた後、石の墓に葬られた。彼は生前に、埋葬されてから三日後に復活すると予言していたので、その墓には見張りの兵士たちがつけられた。すると三日後に、キリストは予言通り死の床から蘇ったのだった。 この絵は、蘇ったキリストが誇らしげに立ち上がった瞬間を描いている。右手を前に突き出して勝利のポーズをとり、左手で死への勝利の象徴とされる白い旗をもっている。処刑に際して群衆によって着せられた赤い衣が右肩から垂れ下がっている。そのほかにはキリストは何も身に着けていない。 画面下部の人物たちは、キリストの墓を見張っていた兵士たちだ。キリストが墓から起き上がったのを目の前に見て、みな驚愕の表情をしている。一番手前の兵士は驚愕のあまり仰向けに転倒している。 キリストと兵士の姿のほかには、現実を思い出させる光景は一切描かれていない。人物像は真っ暗な闇を背景にして浮かび上がっているようにみえる。ここにも、エル・グレコの幻想的な雰囲気を感じとることが出来よう |
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