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聖ヨハネの幻視:エル・グレコの幻想




エル・グレコの生涯最後の仕事は、トレドのタベーラ施療院礼拝堂の祭壇画を描くことだった。この祭壇は中央檀のほか左右の脇祭壇からなっており、中央祭壇には聖ヨハネによるキリスト洗礼が、脇祭壇には聖ヨハネの幻視と受胎告知が描かれた。聖ヨハネの幻視はまた「聖ヨハネによる黙示録の第五の封印」とも呼ばれている。このように聖ヨハネの足跡を描いているのは、この病院の正式名称が「サン・フアン・バウティスタ」すなわち、聖ヨハネ病院であることによる。フアンはヨハネのスペイン語の形である。

聖ヨハネの絵は、エル・グレコの存命中に完成せず、息子の手に引き継がれたといわれるが、構図や色彩には、グレコ自身の意図がそっくり反映されていると言われる。この絵をエル・グレコの最高傑作のひとつに数える批評家もある。

第五の封印とは、聖ヨハネの黙示録にある七つの封印の話のひとつだ。羊が第五の封印をあけると、墓場から殉教者たちが現れ、主に向かって、自分たちの報復をするように呼びかける。すると彼らの一人一人に白衣が与えられたという内容である。

この絵では、ヨハネ自身が天に向かって両手を広げ、主に呼びかけている。一方殉教者たちは裸体のまま墓場から立ち上がり、様々なポーズをしている。一番右手にいる男に、天使の手から白衣が渡されるが、他の人々には黄色やグリーンの布が与えられたようである。

(1614年、キャンバスに油彩、225×193cm、ニューヨーク、メトロポリタン美術館)





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