壺齋散人の 美術批評
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マンゴーの花を持つ二人のタヒチ女:ゴーギャン、タヒチの夢





「マンゴーの花を持つ二人のタヒチ女」と呼ばれるこの絵は、ゴーギャンの肖像画の中では非常にユニークなものだ。ゴーギャンが人間を描くときには、何らかの意味をそこに込めようとして、わざとらしいポーズをとらせることが多かったのだが、この絵にはそうした意図は全く感じられず、女たちは自然な様子で立っている。彼女らは観客の視線を気にすることなく、自分自身、あるいはとなりの人にだけ関心を払っている。

左側の女はなにか物思いに耽っているのか、あらぬ方向へ視線をさまよわせている。右側の女は体を左側の女のほうにやや傾けて、なにか話しかけようとするように見える。この二人はおそらく仲がよいのであろう。二人とも豊かな胸をしており、乳首がマンゴーの花と美しさを競い合っているように見える。この豊かな乳房が印象的なために、この絵は「乳房と赤い花」と呼ばれることもある。

背景を曖昧な色で塗った分、前景の女たちが浮き出て見える。左側のほうをより明るく描くことで、見るものの視線はまずこの女性の方へ集まり、そこから右へと移動するように誘導されているわけだ。

マンゴーの花を筆者は眼にしたことがないが、この絵にあるように、赤いものやピンクのものがあるのだろうか。



これは女たちの表情あたりの部分を拡大したもの。タヒチ女性の肖像の中ではもっとも端正な感じを見るものに与える。(1899年 カンヴァスに油彩 94×72cm ニューヨーク メトロポリタン美術館)





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