壺齋散人の 美術批評
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噂話(Les Parau Parau):ゴーギャン、タヒチの夢





タヒチの人々との係わり合いについて、ゴーギャンは「ノアノア」のなかで次のように書いている。「野蛮人と私との、親睦の始まりだった。野蛮人! このことばは、食人の歯をしたこの黒人たちのことを思うと、避けがたく私の唇にのぼってくるのだった・・・私にとって彼らがそうであるように、彼らにとっても私は『野蛮人』であった。そしてたぶん私のほうが間違っていたのだろう」

フランス人が植民地の人々に対して持っていた偏見を、ゴーギャンもまた共有していたわけである。その偏見が強いままに残ったら、あるいはゴーギャンの偉大な作品群は生まれてこなかったかもしれない。だがゴーギャンは、その偏見を克服しようとして彼らと交わる努力をしたために、芸術家としての感性を養うことができたのだろう。

「噂話」と題したこの絵は、現地の人と互いに打ち明けあうようになったゴーギャンののびのびとした視線を感じさせるものだ。この絵は、現地の人々がゴーギャンの住まいの近くに集まって、噂話に興じるところを描いているが、モデルたちがこんなにも打ちとけた表情を見せているのは、ゴーギャンに対して心を開いているからだろう。

この絵のなかの女たちは、他の多くの絵のなかのタヒチの女たちと異なり、みな肌を覆う服を着ている。これは、彼女たちがことさらにポーズをとっているのではなく、日常の服装のまま寛いでいることを物語っている。



これは、女たちの表情を拡大したもの。みな思い思いにくつろいだ表情を見せている。(カンヴァスに油彩 62×92cm ペテルブルグ エルミタージュ美術館)





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