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タヒチ牧歌(Pastorales Tahitiennes):ゴーギャン、タヒチの夢





この当時のタヒチのゴーギャンとしてはめずらしく、Pastorales Tahitiennes とフランス語で題名をつけたこの絵を、ゴーギャンは大変に気に入り、1892年の12月にモンフレーに宛てて書いた手紙の中で、「これまで最高の出来栄え」と誇った。

構図は「気晴らし」と良く似ている。大きな木の陰に二人の女がいて、そのうちの一人は縦笛を吹いている。その笛の音を犬も一緒に聴いているといったイメージだ。背景の草原や、百合に似た植物も共通している。ただこちらには、二人のほかに人物は描かれておらず、その分観客の視線が二人に集中するようになっている。その割には、立っている女の姿が一部手前の木の枝にさえぎられていて、見るものを多少混乱させるところはある。

暖色が基調になっており、グリーンやブルーはあまり強烈にならない色調に抑えられている。その結果サイケデリックな感じをかもし出しているが、それは当時のゴーギャンの心境を反映したものだといえなくもない。



これは犬の部分を拡大したもの。ゴーギャンは犬が好きだったのか、絵のなかにこのように犬を加えることが多い。(1892年 カンヴァスに油彩 87.5×113.7cm エルミタージュ美術館)





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