壺齋散人の 美術批評
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パイプをくわえた自画像:ゴッホの自画像3




「パイプをくわえた自画像(Self-Portrait with Pipe)」と題するこの絵は、1886年の秋に描かれた。この年の3月にパリにやってきて、すでに半年になり、印象派の画家たちとの交流もあったにかかわらず、まだ印象派風の明るい画面は現れず、依然としてオランダ時代の暗い画面のままである。

画面の中のゴッホは、顔の右半分(鏡の中では左)をこちらに向け、口先にはパイプをくわえている。パイプの先端の穴には、火のついたタバコが見えているが、煙は漂っていない。煙がないかわりに、首筋のシャツのカラーの白さがハイライトの効果を上げている。

まだ30代半ばというのに、この絵の中のゴッホは初老の男のように見える。それは、伸びた無精ひげもさることながら、額によせた深いしわと、愁いげな目つきによるのだと思われる。

(1886年秋、キャンバスに油彩、46.0×38.0cm、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館)





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