壺齋散人の 美術批評
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自画像:ゴッホの自画像11




これも、制作済みの作品のキャンバス裏地を使って描いたものである。前作とほぼ同じ時期に描かれたものだ。裏面には、ランプの光の下に、一人の男と三人の女たちが食卓を囲んでいるところ描かれており、あの「ジャガイモを食べる人々」のための習作だと思われる。

この絵の中のゴッホは、体は正面を向きながら、視線は違う方向を向いている。額には皺がより、何やら考え事をしているようにも受け取れる。画家と言うよりは、聖職者を思わせるような表情である。

この絵を描いた頃のゴッホは、ゴーギャンやベルナールとの親交を深めながら、印象派風の明るい色遣いをマスターしようとしていた。この絵にはその努力のあとがうかがえる。絵に明るさだけでなく、深さも出てきているように見える。

(1887年夏、キャンバス裏地に油彩、41.0×33.0cm、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館)





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