壺齋散人の 美術批評
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自画像:ゴッホの自画像15




三点の「麦わら帽をかぶった自画像」に続いて描かれたこの自画像は、暗い背景から顔の輪郭が浮かび上がるように工夫されている。しかしレンブラントのいくつかの自画像のように、背景を真っ暗に塗ることはせずに、曖昧なアクセントを加えることで、ソフトな印象をもたらそうと努めている。

この絵の中のゴッホも、観客とは違った方角を見ている。自画像の中に自分の姿を忠実に再現しようとすれば、目をおのずから観客のほうに向けるはずなのだが、そうならなかったのは、ゴッホが意識的に視線の向きを変えたからであろう。ということは、ゴッホは自画像を自分の忠実な再現としてではなく、ひとつの創造的行為と考えていた、ということだろう。

目の周りには特徴的な線がいくつも引かれている。また、顔の他の部分にも、頭にも、ジャケットにも同じような線が引かれている。それらの線によって、画面に独特なリズム感が生まれているようである。

(1887年末~87年初、キャンバスに油彩、47.0×35.0cm、パリ、オルセー美術館)





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