壺齋散人の 美術批評 |
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ユーディットとホロフェルネス:ゴヤの黒い絵 |
聾の家一階食堂正面の壁に、「我が子を食らうサトゥルヌス」の右隣に接して描かれていたのが「ユーディットとホロフェルネス」と題された絵(146×84cm)である。ユーディットは、旧約聖書外典「ユディト書」に出てくる女性であるが、アッシリア王ネブカドネサルによって派遣された将軍ホロフェルネスを、策を用いて寝床に誘い込んだうえに、その首を刎ね、ユダヤ人を危機から救った聖女ということになっている。このテーマは、キリスト教圏の画家たちのインスピレーションを刺激し、ルネサンス以降好んで描かれた。中でも有名なのは、クラナッハの描いたものである。 「我が子を食らうサトゥルヌス」同様、暗黒を背景にして浮かび上がったユーディットが、右手に短剣を振りかざし、ちょうどホロフェルネスの首を刎ね終わったと思しきところを描いている。ホロフェルネスの首は、画面には見えないが、彼の首から飛び散った血が、ユーディットの頬や髪を染めている。おそらくユーディットの左手に、ホロフェルネスの首が握られているのであろう。 左下の老婆は、合掌しているようにも見えるが、蝋燭をかざして、ユーディットの手元を照らし出しているのである。 専門家によれば、この絵はキャンバスに移される際に、かなりぞんざいに扱われたらしく、原作のもっていた迫力が、だいぶ損なわれたということである。 この絵についても、「サトゥルヌス」と同様さまざまな解釈が施されている。最も有力なのは、ゴヤが自分のインポテンツを自嘲したというものだ。それによれば、首を刎ねることは、去勢の隠喩ということになる。ゴヤは老齢から来た自分の性的不能を、去勢者のそれに譬えているというのだ。 |
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