壺齋散人の 美術批評 |
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スープを飲む老人:ゴヤの黒い絵 |
この絵(53×85cm)は、とりあえず「スープを飲む老人」としておいたが、題名も、描かれた場所も、確定的なことがわかっていない。場所については、聾の家一回食堂の入り口の上部に描かれたという説と、二階サロンの入り口左手の壁に描かれたという説が拮抗している。ゴヤの研究で知られる堀田善衛は一階説だが、ここでは二階説を取りたい。そうしないと、二階サロンの入り口左手の壁だけが、空白になってしまうからである。 題名は、老人の動作をどう捉えるかによって、別れる。二人とも食事をしていると捉えれば、食事をする二人の老人となるし、食事の内容を更に限定してスープと捉えればスープを飲む老人ということになる。また、スープを飲んでいるのはただの老人ではなく、老婆あるいは魔女だとする解釈も成り立ちうる。ここでは、画面左手の老人を、スープを飲む老人と捉え、右手の老人は、書物かなにかを抱えているというように捉えて置く。 スープを飲んでいる老人は、歯が抜け、顎がこけて、眼は異様に大きい。書物を抱え込んでいる老人は、目鼻立ちがはっきりしないほど、崩れた顔つきをしている。ハンセン病患者を思わせるようだ。 二人とも、左手の親指を、同じような方向に向けて突き出しているが、その先に何かがあるのだろう。それは、この絵からは明確に伝わってこない。 |
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