壺齋散人の 美術批評
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むしられる鳥たち:ゴヤの版画



(みんなひっかかるだろう)

この奇妙な絵で、ゴヤは一体何を言いたかったのか、様々な憶測がなされてきた。図像的には、画面の下で、人間の顔をした鳥が、女たちによって羽をむしられ尻の穴に串を突っ込まれているのと、一本の枯れ木の枝の上やその周囲にいる、これもやはり人間の顔をした鳥たちが目を引く。この鳥たちは、何の隠喩をあらわしているのだろうか。

好色な聖職者や、貪欲な政治家を風刺したという見方がある。それによれば、彼らは娼婦の色気に魅せられてやって来たはいいけれど、娼婦によって身ぐるみ剥される目にあっているのだということになる。つまり、二人の若い女は娼婦で、羽をむしられている鳥は聖職者、左手の老婆は遣手婆ということになる。婆が両手を合わせて顔を上げているのは、枝に止まっているカモたちが落ちてこないかと願っているのだろう。


(むしりとられて追い出され)

これは、上の絵の延長と考えてよいだろう。ここでは、人間の顔をした三羽の鳥が、羽をむしられたうえ、女たちによって、箒で追い立てられている。右手上方には、一羽の鳥が背中を見せて飛んでいるが、これは仲間の受難を見て、逃げようとしているのだろう。

二枚の絵を通じて、鳥の表情がなんともユーモラスだ。





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