壺齋散人の 美術批評
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怠惰と貪欲:ゴヤの版画



(これこそまさに読書だ)

小さな椅子にちょこんと腰かけた老人。背後の暗闇には二人の男がいて、一人は老人の髪を手入れし、もう一人は老人に靴を履かせている。当の老人は、組んだ膝の上に本を広げているが、それを読んでいるわけではない。居眠りをしているのだ。

この老人は、一時に、髪の手入れと、靴を履くのと、読書と居眠りの四つのことを並行しておこなっているわけだ。だからこの老人は時間を無駄にせず、有効に使っているといえないこともない。

この老人の姿にゴヤは、同時代の権力者たちの生きざまを重ねたのであろう。この時代の権力者は、時間を有効に使って、ろくでもないことに精を出していたというわけなのだ。


(どうして隠すんだい)

この版画集でゴヤは、聖職者たちの貪欲さぶりを示す図柄を何枚も描いているが、これもその一枚。修道士と思われる人物が、恐らく金貨を入れた袋を膝にかかえてしゃがみこんでいる。その背後には何人かの男たちがいて、薄ら笑いを浮かべているところから、この修道士は、彼らの目からお宝を隠そうとしているのだろう。題名がそれを暗示している。

それにしても、聖職者のバツの悪そうな顔つきと、男たちの笑い顔とが対象的である。どちらの顏も、人間の貪欲さのあらわれだと言える。





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