壺齋散人の美術批評 |
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ちょっとした刺し傷 フリーダ・カーロの世界 |
「ちょっとした刺し傷(Unos cuantos piquetitos)」と題されたこの絵は、ある殺人事件に刺激されて描いたものだ。妻をナイフで殺害した男が、妻の傷口を見せられて、これはちょっとした刺し傷です、と答えた。それにフリーダは、男による性差別的暴力性を感じてこの絵のアイデアを得たといわれる。 この絵を描いたころ、フリーダはディエゴの性的なだらしさにうんざりしていた。ディエゴは、こともあろうか自分の妹のクリスティーナにまで手を出した。さすがのフリーダも、離婚を真剣に考えたほどだった。この絵には、そうしたフリーダの心理状態が反映しているようである。 ベッドの上に血まみれの女が横たわり、その傍に男が立っている。男の顔には薄笑いがうかび、その手には血まみれのハンカチが握られている。男の顔には、ディエゴの面影をみることができる。白黒二羽の鳩が、リボンを広げているが、そのリボンには「ちょっとした刺し傷」と書かれている。 (1935年 金属板に油彩 38×48㎝ メキシコシティ、ドロレス・オルメド美術館) |
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