壺齋散人の美術批評 |
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乳母と私、あるいは乳を吸う私 フリーダ・カーロの世界 |
フリーダは、わずか11か月の時に妹のクリスティーナが生まれたので、母親はクリスティーナのほうに勢力を傾け、フリーダのことはあまり世話しなかった。授乳はインド人の乳母にまかせきりだった。そのことにフリーダは、複雑な感情を抱いた。クリスティーナは、幼い時分から母親の愛情を奪ったばかりでなく、大事な夫のディエゴまで奪ったのだから、彼女が複雑な気持ちを抱くのは当然なのである。 「乳母と私、あるいは乳を吸う私(Mi nana y yo o Yo mamando)」と題されたこの絵は、フリーダと乳母の関係を回想したものだ。フリーダはこのテーマでいくつかの作品を手掛けている。 乳母はフリーダを抱いて乳を飲ませ、フリーダは乳を飲んでいる。不思議なのは、乳母がマスクをつけて素顔を見せないことと、フリーダが、身体は赤ん坊のままで、顔だけ大人であることだ。しかも、乳母の乳房には、乳腺が浮かび上がっている。幼いフリーダは、その乳腺からしみだしてくる乳を、機械的に飲んでいる風情だ。 背景に粉雪の舞う様子が描かれ、右手には雪で白く染まった葉が描かれている。なんとも寒々とした雰囲気の作品である。 (1937年 金属プレートに油彩 30.5×34.7㎝ メキシコシティ、ドロレス・オルメド・コレクション) |
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