壺齋散人の美術批評
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森の中の二人の裸婦 フリーダ・カーロの世界




「森の中の二人の裸婦(Dos desnudes en un bosque o La tierra misma o Mi nana y yo)と題されたこの絵は、副題に「大地あるいは乳母と私」とあるように、大地に横たわった乳母とフリーダをイメージした作品。フリーダはこれ以前に「乳母とフリーダ・カーロ」と題した絵を描いており、そこでは乳母との表面的なつながりが強調され、二人の間には深い愛情を感じることはなかった。この絵の中の二人は、親密とはいえないまでも、よそよそしい関係にも見えない。

フリーダは、自伝的な作品「水の中に見たもの」の中で、この絵の図柄と同じものを描き入れていた。それを独立させて、それなりの背景の中に配置したのがこの絵の図柄である。

背景に地平線が描かれ、二人の裸婦は森のはずれに横たわっている。森の中には、猿が身を潜めて二人の裸婦をうかがっている。これはフリーダのペット、クモザルのフラン・チャンであろう。なお、この二人の裸婦を、フリーダと乳母ではなく、フリーダの同性愛的な傾向を表現したものだとする解釈もある。フリーダは、自分のそうした傾向を、ディエゴにも隠さなかった。ディエゴがフリーダとの離婚を迫ってきたのは、彼女の同性愛を拒絶したからだとも考えられる。

(1939年 金属板に油彩 25×30.5㎝ プライベート・コレクション)



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