壺齋散人の美術批評
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茨の首飾りの自画像 フリーダ・カーロの世界




「茨の首飾りの自画像(Autorretrato con collar de espinas)」と題されたこの絵は、「ドクター・エレッサーに捧げる自画像」と前後して制作された。両者とも、フリーダは茨の首飾りをつけている。茨の首飾りは、自分につらく当たるディエゴを象徴的に表現していると考えられる。この時期のフリーダは、ディエゴと離婚したばかりだったが、ディエゴを憎んでいたわけではなかった。ディエゴと一緒にいることができないことの代償として、他の男と付き合ったりしたが、まもなくやめてしまった。だから、男一般への複雑な気持ちを、この茨の首飾りで表現したかったのかもしれない。

首飾りの真ん中あたり、彼女ののどの真下に、ハチドリがぶら下がっている。ハチドリは、メキシコの伝説では、幸運の御守とも、アステカの戦争の神の使いとも言われている。両肩には、黒猫とクモザルがのっている。黒猫は死の、猿は悪の象徴である。また、髪飾りには二羽の蝶が、その上部の草のそばには二匹のトンボがいる。

フリーダの自画像は、顔を斜めに向けているのが多いのだが、この絵の中のフリーダは正面を向き、われわれを凝視しているように見える。両方の眉毛はつながり、口元にはうっすらとひげを生やしている。

(1940年 カンバスに油彩 63.5×49.5㎝ テクサス大学オースチン校)



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