壺齋散人の美術批評 |
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折れた背骨 フリーダ・カーロの世界 |
フリーダは、18歳の時に交通事故で脊椎を損傷して以来、その後遺症に苦しんだ。1944年には、脊椎の矯正手術を受けざるをえなかった。手術の後は、金属製のコルセットでぐるぐる巻きにされた。その気が滅入るような自分の状況を、フリーダは「折れた背骨(La Columna rota)」と題されたこの絵で表現した。 ほぼ正面を向いたフリーダは、割かれた身体を通じて損傷した背骨を見せている。背骨はところどころ断裂している。これでは体を支えることはできない。そのため、肩から腰にかけてコルセットを巻き、姿勢の安定を図らねばならない。それは不自然で苦痛に満ちたものだ。フリーダの目からは苦痛のために涙があふれている。全身に突き刺さった鋲は、局所的な苦痛の所在をあらわしている。 他の自画像とは異なって、この絵には猿やインコといったおなじみの動物はおらず、フリーダは孤独である。その孤独な姿で、荒涼とした大地の中に立っている。大地はむき出しのままで、かつ裂けている、あたかもフリーダの背骨の断裂と呼応しあっているように見える (1944年 カンバスに油彩 40×30.7㎝ メキシコシティ、ドロレス・オルメド・コレクション) |
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