壺齋散人の美術批評 |
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モーゼあるいは太陽の核 フリーダ・カーロの世界 |
フリーダは、有力な後援者ホセ=ドミンゴ・ラビンから借りて読んだフロイトの著作「モーゼと一神教」に夢中になり、読書の印象をイメージ化した。「モーゼあるいは太陽の核(Moisés o Núcleo Solar)」と題されたこの絵がそれである。彼女はこの絵を二か月かけて完成させ、国立芸術宮殿の美術展で受賞した。 テーマは、太陽の子として誕生したモーゼである。フロイトのモーゼは一神教の創設者という位置づけである。モーゼが人類に道徳をもたらしたというのがフロイトの主張の要点である。フリーダは自分なりのモーゼ像をもっていて、それをこの絵で表現した。彼女のモーゼ像は、太陽の子としてのモーゼである。絵は、上部に巨大な火の塊としての太陽を描き、その下に太陽の核に包まれた胎児のモーゼを描き、下段に生まれたばかりのモーゼを描く。モーゼにはディエゴの面影を見ることができる。ほかの絵のディエゴ同様、この絵の中の赤ん坊のモーゼも額に智慧の目をつけている。 両脇には、人類の歴史を動かしてきた様々な人物が配置されている。その中心は、人類の祖先であるアダムとイブ。かれらは顔を向けあっている。そしてかれらのまわりに人類の歴史を彩る英雄的な人物が控えている。左側には、エジプトのファラオを先頭にして、仏陀、マルクス、スターリンなどが見え、右側には、ヒンドゥーの神を先頭に、イエス・キリスト、マルティン・ルター、アドルフ・ヒトラーなどが見える。 (1945年 メソナイトに油彩 61×75.6㎝ プライベート・コレクション) |
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