壺齋散人の 美術批評
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忘れっぽい天使(Vergesslicher Engel):クレーの天使




クレーの晩年の天使の絵の中で最も人気のあるのが「忘れっぽい天使(Vergesslicher Engel)」と題したこの絵だ。人気の理由は形のわかりやすさだと思う。ほかの天使の絵が、かろうじて顔の輪郭がわかる程度で、全体的には、はっきりとした形になっていないのに対して、この絵の天使は、顔と胴体と手とが、あるべき場所にきちんとあり、また羽根も羽根らしい形になっている。そんなわかりやすさが、親しみやすさに通じているのだろうと思う。

この天使が忘れっぽいというのは、どういうことなのだろうか。顔を半ばうつむいて、とぼけた様子を見せているところが、忘れっぽさをカムフラージュしている仕草なのだろうか。

谷川俊太郎の詩には、この天使は、「ほほえみながらうらぎり、すぐそよかぜにまぎれてしまううたで なぐさめる」とあるが、それは、忘れっぽさのあらわれであり、また、それをつぐなうためのてれかくしなのだろうか。





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