壺齋散人の 美術批評
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セネキオ(Senecio):クレーの天使




題名にある「セネキオ(Senecio)」とは、キク科の植物「サワギク」のこと。天使ではないが、その子どもっぽい顔が、天使の顔を思わせる。これは、「新しい天使」を描いた翌年(1922年)、クレーがバウハウスにあって、もっとも創造力に溢れていた時代の作品だ。

一見してわかるように、四角形と円形を組み合わせている。円形の顔の輪郭の内部に二つの円形の瞳を配し、口は二つの小さな四角形を組み合わせて表現している。暖色系の色彩の中でも黄色を強調しているのは、キクの色を意識したのだろう。また、放射状になった目の形も、キクの花弁を思わせる。

ガーゼ布の上にチョークで下塗りし、その上に油彩を施している。なお、セネキオという言葉には、老人を意味するラテン語「セネクス(senecus)」を連想させるとする見方もある。そうだとすれば、この絵は、子どもらしさと老人らしさの組み合わせを描いたものだというふうにも、解釈される。

(ガーゼ布に油彩、40.5×38.4cm、バーゼル美術館)





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