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敵対する勢力:クリムトのベートーベン・フリーズⅡ





ベートーベン・フリーズのうち、第二の壁に描かれた部分は、人類に敵対する勢力をテーマにしている。批評家から激しい非難を浴びたこのプロジェクトの中でも、もっとも強い非難が集中した部分だ。縦220cm、横650cmの巨大な画面のうち、左側半分には人間に敵対する様々な魔物が、右半分には抑圧されて打ちひしがれる女が描かれている。

上は画面の左半分。ゴリラのような形をした怪物テュフォンをはさんで、左側には、病気、死、狂気などを擬人化したものが、右側には不節制や好色を擬人化したものが描かれる。それらの敵対勢力は、悪魔とか鬼というよりは、ヨーロッパの宗教的伝統を踏まえた七つの大罪のイメージに近い。

当時の展覧会のカタログには、この部分について次のように書かれていた。「人間に敵対する力、神々も制しえない巨大なテュフォン、その娘の三人のゴルゴン。病気、狂気、肉欲、好色、不節制、打ちひしがれるような心痛」



これは、テュフォンの左側の部分を拡大したもの。手前の三人の女は、テュフォンの娘ゴルゴンたち、その背後には病気、狂気、死をそれぞれ擬人化したものが描かれている。

また足元にのぞいて見えるのは人間の亀頭であり、そこから放出された夥しい数の精子が、上方へ向かって勢いよく跳ね上がってゆく。



これは、テュフォンの右側の部分を拡大したもの。ぼて腹の女は不節制を、赤毛の女は好色を象徴している。

(1902年 漆喰面にカゼイン塗料等 高さ220cm ウィーン 分離派館)




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