壺齋散人の 美術批評
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水蛇Ⅱ:クリムトのエロス





「水蛇Ⅰ」とほぼ同じ時期に描かれたこの「水蛇Ⅱ」も女性たちの同性愛的な世界をテーマにしているようだ。Ⅰのほうが立ちながら抱き合っている二人の女を描いているのに対して、このⅡは思い思いに横たわる女たちを描いている。彼女らは互いに身体を密着させてはいないが、寛いだ雰囲気の中でもエロティックな感じをかもしだしている。

構図には複雑な意図は感じられない。横たわった女性たちを無造作に並べているように見える。四人の女性が見えるが、そのうち全身を現わしているのは二人で、どちらも尻にポイントが置かれている。

Ⅰのほうは金色を惜しげもなく使い、華やかで妖艶な感じがするのに、この絵では金色が押さえられ、その分さまざまな色彩が豊富に用いられている。それが装飾的なイメージを高めているようだ。



これは女たちの顔の部分を拡大したもの。下の女はこちら(観客のほう)を向いて、しなを作っているように見えるが、外の三人はそれぞれ自分自身の恍惚感の中に閉じこもっているように見える。

(1907年 カンヴァスに油彩 80×145cm 個人蔵)




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