壺齋散人の 美術批評
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フリーデリケ・マリア・ベーアの肖像:クリムト





「エリザベート・バホーフェン=エヒトの肖像」に見られたオリエンタリズムを更に押し進めたのがこの「フリーデリケ・マリア・ベーアの肖像」だ。背景に中国風ともモンゴル風とも区別がつかないが、雰囲気としては東洋風のイメージが、隙間なくびっしりと描かれている。モネやゴッホの絵に見えるジャポニズム的な要素とはかなり違っている。

モデルが着ている衣装の模様は、ウィーン工房のデザインだそうだ。ウィーン工房は、総合芸術工房として、大は建築の様式から、小は日常生活品、そして衣装のデザインまで手がけていた。

モデルのフリーデリケ・マリア・ベーアは、ウィーンの有名なナイトクラブのオーナーの娘。この絵は、恋人からのプレゼントとして注文された。恋人が、真珠の指輪かクリムトの肖像画かどちらかをプレゼントしようと言ったところ、彼女は躊躇無くクリムトの手になる肖像画を選んだということだ。



これはモデルの上半身を拡大したもの。背後の人物像はモンゴル風に見える。一方、モデルの表情には、エリザベートのような知性は感じられない。なお、フリーデリケは、エゴン・シーレにも肖像画を描かれている。クリムトとシーレの二人に肖像画を描かれたのは、ほかにはいない。

(1916年 カンヴァスに油彩 168×130cm ニューヨーク メトロポリタン美術館)




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