壺齋散人の美術批評
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吟遊詩人 トーマス・ジョーンズの風景画




「吟遊詩人(The Bard)」と題されたこの絵は、ウェールズの歴史をモチーフにしていることから歴史画に分類されるが、背景にウェールズの風景が描かれていることから、風景画として受け取ることができる。この絵のモチーフとなったのは、トーマス・グレイの伝説的な物語で、エドワード一世によるウェールズの吟遊詩人虐殺を語ったものだ。

絵には、二人の吟遊詩人が描かれている。これは一人の人物を二つにわけたものと解釈される。立っているほうは、イギリスの侵略者を呪っている。その後、この吟遊詩人は、大きな岩から身を投げて死ぬのであるが、絵では倒れて横たわっている人物として表現されている。

前景に枯れかかった大きな樹木、背景にごつごつとした岩山を配している。その描き方には幻想的な雰囲気を感じることができる。題材のもつ雰囲気がこの作品を幻想的なものにさせたのであろう。

(1774年 カンバスに油彩 135.5×190.5㎝ カーディフ国立美術館)



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