壺齋散人の 美術批評
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コーデュー:ロートレックのポスター





アルベール・コーデューは、アリスティード・ブリュアンと人気を二分するエンタテイナーだった。その彼からの依頼で、ロートレックが制作したポスターがこれだ。画面からわかるように、もっぱらコーデュー一人を宣伝している。今ではこういう宣伝ポスターは珍しくはないが、19世紀末のヨーロッパで個人を宣伝するポスターは画期的だったようだ。

コーデューは、赤ら顔とでっぷりした体格が売り物だったが、この図柄にはそういう彼の特長がよく表現されている。手足の一部が画面から飛び出しているのは、彼の破天荒な演技が枠に収まらないということを意味している。実際彼の演技は、舞台狭しとやたらに飛び回るものだったようだ。

右下に人の顔が描かれているが、これは舞台の袖からコーデューの演技を感嘆しながら見ている女性の顔だ。バレリーナのラ・ルーだと言われている。ラ・ルーから言われて付け加えたのか、それともロートレックのこだわりからなのか、よくはわからない。

この図柄も、黒い部分の周囲をグレーの線で縁取っている。顔料は、黒に加え、オリーブグリーン、黄色、赤を使っている。

(1893年 リトグラフ 130×95cm )




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