壺齋散人の 美術批評
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赤いキュロットのオダリスク(Odalisque à la culotte rouge):マティス、色彩の魔術





マティスは1920年代に、オダリスクをモチーフにした多くの作品を描いた。オダリスクとは、トルコのハーレムに仕える侍女のことだ。マティスはモロッコに何度も旅をしたが、そのさいにイスラム趣味の一環として、このオダリスクに興味を覚えたのだろう。フランスでは、アングルなどが過去にオダリスクをモチーフにしていたこともあって、なじみのあるテーマでもあった。

オダリスクを描くために、マティスはニースのアパートのアトリエの一角にトルコ風の桟敷をわざわざ造り、そこにモデルのアンリエットを寝かせて製作した。アンリエットは1927年までマティスのモデルを勤めた。

アンリエットにさまざまなエクゾティックな衣装を着せ、背後には様々な模様の布や衝立を置いて、作品に変化を与えた。「赤いキュロットのオダリスク(Odalisque à la culotte rouge)」と題するこの絵は、アンリエットにキュロット・ズボンを履かせ、上半身を肌けさせている。両手を頭の後ろに回しているが、このポーズはこの時代に手がけた彫刻作品にも共通している。マティスはこのポーズが好きだったのだろう。

キュロットの赤の周囲には床の赤を配することで、全体に赤が主体の暖かい感じの絵になっている。

(1921年 キャンバスに油彩 65×90cm パリ、現代美術館)





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