壺齋散人の 美術批評
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マグノリアとオダリスク(Odalisques aux magnolia):マティス、色彩の魔術





タイトルのマグノリアとは、木蓮科の花のことである。モデルの背後にある衝立らしきものの模様に、そのマグノリアが使われている。衝立の前に横たわっているのは、アンリエットだろう。白い上着と白いスカートを履き、上半身をはだけているポーズは、「赤いキュロットのオダリスク」と似ている。角度が横向きなところが違っているだけだ。

色彩感は、「赤いキュロットのオダリスク」とは正反対で、こちらは背景を寒色主体にしている。衝立のブルー、シートのグリーンといった寒色を背景にして、モデルの肌色がより温かみを感じさせる。その温かみのために、このモデルはまるで生きているように感じられる。

衝立を飾るマグノリアは、二輪だけを大きな白い花の形で描き、ほかは曖昧な形であらわしている。背景のパターンを細部まで詳しく描くのが好きなマティスとしては、大胆な省略といえる。寒色でまとまった部分だから、余計に細部にこだわることがうるさいと感じたからかもしれない。

寒色と対比させて、暖色が用いられているのは、衝立のつなぎ目の部分と左手前の皿に盛られた果物(恐らくマンゴー)だ。つなぎ目のほうはくすんだオレンジで、鮮やかな暖色ではない一方、果物のほうは、淡いタッチで塗られているが、温かみを感じさせる。

衝立の縦の線と、シートの模様の横の線とが、対比を演出して、画面に動きのようなものをもたらしている。

(1924年 キャンバスに油彩 65×81cm 個人蔵)





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