壺齋散人の 美術批評
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アダムの創造:ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」




創世記の記述は、天と地及び天体の創造のあと生き物の創造を挟んで、いよいよ人類の祖先たるアダムとエヴァの創造に及ぶ。この二人がどのように創造されたかについて、創世記の記述はいささか混乱している。第一章では、神が男と女を同時に創造したということになっているのに対して、第二章ではまず男(アダム)を創造し、その後でアダムの体の一部から女(エヴァ)を創造したということになっている。

ミケランジェロは、創世記の記述のうち第二章の記述に依拠している。その部分は以下の如くである。「2:7主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。 2:8主なる神は東のかた、エデンに一つの園を設けて、その造った人をそこに置かれた」(口語訳聖書)



ミケランジェロが描いたのは、神がアダムを創造した瞬間だと思われる。創世記の記述では、神は命の息をアダムの鼻に吹き込んだ結果アダムが生きた人間となったとされているが、この絵では、神は指先を通じてアダムに霊気を伝えたと読み取れる。命をもらったアダムは、身を起こして神のほうへと手を指し伸ばしている。人間は手を通じて神とつながっているとミケランジェロは言いたいのだろうか。



神の周囲には大勢の天使たちが群がって、神の偉大な創造を目撃している。創世記の創造神話には天使は出てこないのだが、ミケランジェロは天使が神と人間との仲介者であるという性格を重んじて、彼等を人間の創造の場にも立ち合わせたのだろう。





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