壺齋散人の 美術批評
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原罪:ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」




原罪の話は、アダムとエヴァが神による禁断を破って智恵の木の実を食べた結果羞恥心を知るようになったこと、及び禁断を破った罪でエデンの楽園を追われることからなっている。ミケランジェロはこの二つの部分を一つの画面に共存させた。即ち蛇が巻きついた智恵の木を中心にして、その左側に禁断の木の実をとる場面、右側にエデンの園を追放される場面を並べて描いたわけである。

二つの場面がばらばらな印象を与えないのは、中央にある智恵の木が両者をつなぐ枠目を果たしているからだ。その木に巻きついた蛇が左側を向いてアダムとエヴァを欺いている一方で、同じ智恵の木から姿をあらわしている天使がアダムとエヴァに鞭をふるって追い払っている。

一つの場面に違った時点の出来事を共存させるという技法は、日本の絵画の歴史では珍しくないが、西洋ではほかに余り例を見ないようだ。



これは、アダムとエヴァが二人揃って蛇に欺かれるところを描いている。創世記では、まずエヴァが蛇にそそのかされ、ついでアダムがエヴァにそそのかされるという形になっているが、ミケランジェロはそれを二人同時に欺かれたというふうに解釈しなおした。そのほうが、絵としてまとめやすかったからだろう。



アダムとエヴァが天使によって追い立てられるところ。アダムの表情には絶望感が漂い、エヴァの表情には恐怖感があふれている。楽園からの追放は、一面ではこのように辛い出来事としての性格を持っているのだが、これをきっかけにして人間が人間らしい生き方をし始めたという点では、前向きなところもある。ミケランジェロとしては、とりあえず原罪の罪としての側面を強調したかったのだろう。原罪の思想は、カトリックにとっては宗教の根本にあるものだったから。





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