壺齋散人の 美術批評
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ノアの泥酔:ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」




創世記がノアの泥酔の話をさしはさんだのは、ノアの三人の息子たちの言動が、人類のその後の歴史に大きく影響したのだと言いたいためだったと思われる。ノアにはセム、ハム、ヤペテという三人の息子があったが、セムはイスラエル人の、ハムはアラブ人の、ヤペテはそのほかの人種の祖先となった。この三人のうち、セムとヤペテは父親ノアの祝福を受けたが、ハムは呪いを蒙った。そんなこともあって、イスラエル人が引き続き神の選良でありつづけたのに対して、ハムの子孫たるアラブ人はイスラエル人の敵とみなされるようになる。

この部分についての創世記の記述は次のとおりである。「9:20さてノアは農夫となり、ぶどう畑をつくり始めたが、 9:21彼はぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。 9:22カナンの父ハムは父の裸を見て、外にいるふたりの兄弟に告げた。 9:23セムとヤペテとは着物を取って、肩にかけ、うしろ向きに歩み寄って、父の裸をおおい、顔をそむけて父の裸を見なかった。 9:24やがてノアは酔いがさめて、末の子が彼にした事を知ったとき、 9:25彼は言った、『カナンはのろわれよ。彼はしもべのしもべとなって、その兄弟たちに仕える」。 9:26また言った、「セムの神、主はほむべきかな、カナンはそのしもべとなれ。 9:27神はヤペテを大いならしめ、セムの天幕に彼を住まわせられるように。カナンはそのしもべとなれ』」



ミケランジェロのこの絵は、三人の息子たちが泥酔して裸で寝ているノアに着物を着せようとしているところを描いている。創世記では、ハムはこの行為には加わらなかったと読み取れるが、ミケランジェロは彼も含めて三人の息子が揃って父親に配慮しているところを描いている。

ノアの背後には巨大な樽があるが、これはワインを貯蔵しているのだろう。



この絵は、中央部の主題の絵を取り巻く四人の裸体像の一つである。





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