壺齋散人の 美術批評 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|ブレイク詩集|フランス文学|西洋哲学 | 万葉集|プロフィール|BBS |
ベアトリス・ヘイスティングス:モディリアーニの肖像画 |
ベアトリス・ヘイスティングスはイギリス人のジャーナリストで、パリには1914年の4月にやってきた。目的は、ロンドンの雑誌「サ・ニューエージ」のために、「パリの印象」というコラムの記事を書くことであった。彼女はその取材のために、モンパルナスにたむろするボヘミアンたちの生態にも関心を向けた。そうしているうちに、モディリアーニと知り合ったのである。 彼女が始めて見た時のモディリアーニの印象はあまりよくなかった。ロンドンに送った記事の中でモディリアーニに触れて、「ひどい身なりで、粗野で物欲しそう」とこき下ろした。しかし二度目に会ったときは、モディリアーニは髭を剃り、小ざっぱりした身なりをして、「魅力的に見えた」。その時モディリアーニは、自分の絵を見に来るようにと彼女を誘ったのだったが、彼女はその誘いに乗ってモディリアーニの部屋に出かけ、そのままモディリアーニと暮らすことにしたのだった。 モディリアーニとベアトリスの共同生活は二年ほど続いた。その間にモディリアーニは彼女をモデルにして幾つかの絵を描いた。これは1915年に描いたものである。長く引きのばされた首の上にうりざね型の顔が乗り、簡潔な線によって表現された表情の中心にアーモンド形の眼が、左右非対称に描かれている。モディリアーニの肖像画を特徴づける要素の殆どが揃っている。 この絵の中のベアトリスは、まっすぐに前を向いて、意思の強さのようなものを感じさせる。実際のベアトリスが、果してこの絵のような雰囲気を漂わしていたのか。モディリアーニはベアトリスの木炭デッサンもいくつか残しているが、それらを比較すると、何とも言えないような気がする。 なお、見てわかるとおり、モディリアーニは画面の中心軸をいくらか外れたところにモデルを配置している。これも、モディリアーニの特徴的な要素の一つである。 (1915年、キャンバスに油彩、81×54cm、個人蔵) |
|
HOME|モディリアーニ|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2014 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |