壺齋散人の 美術批評 |
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ルネ・キスリング:モディリアーニの肖像画 |
モイズ・キスリングの妻ルネの肖像画をモディリアーニは二点描いているが、これはその二作目である。一作目のルネは、落ち着いた雰囲気を漂わせ、しとやかで上品な女性という印象を与えるが、この絵の中のルネは全く対照的に描かれている。しとやかどころか、一癖ありそうな、崩れた感じの女性としてである。 モディリアーニは、自分がやっと確立したばかりの独特の様式をこの絵の中に盛り込んで見たかったのだろう。首を斜めにかしげ、その上に乗っかっている頭部は首とは逆の角度で傾いている。髪を短く切って、前髪を垂らしているところは、目の前の彼女をそのままに描いたのだろうか。もしかして、無理にそんな風に細工したのかもしれない。その結果、この絵の中の彼女は、いっそう活発な雰囲気を漂わすようになった。目玉が塗りつぶされているところも、あやしい雰囲気の演出につながっている。 唇を突き出しているところなどは、挑発的に見える。ブレザーにニット・タイといった男っぽいファッションも、彼女を活発な女に見せている。とにかく、一作目の絵の中の彼女を見た後に、この絵を見ると、とても同じ女性のようには見えない。 ルネ自身が、この絵をどのように受け取ったのか。興味深いところだ。 (1917年、キャンバスに油彩、46.2×33.2cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー) |
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