壺齋散人の 美術批評 |
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大きな帽子のジャンヌ:モディリアーニの肖像画 |
1917年の夏頃、モディリアーニはジャンヌ・エビュテルヌに出会った。その頃ジャンヌは美術学校の学生だったのだが、学校のモデルの女性を通じてモディリアーニに紹介されたのだった。その時ジャンヌは19歳、モディリアーニは33歳だった。二人はたちまち恋に陥り、グランド・ショーミエール通りのアパルトマンで一緒に暮らし始めた。 ジャンヌは、物静かで穏やかな性格の女性だったといわれる。だが芯の強いところもあったことは、両親の強い反対を押し切ってモディリアーニと暮らすことを選んだことからわかる。彼女のモディリアーニへの愛には強くて深いものがあった。それ故にこそ、生きては彼に忠実につくし、モディリアーニが死んだときには、自分もその後を追うことを選んだのだろう。 そんな彼女をモディリアーニも深く愛したようだ。彼女の肖像画を数多く描いたが、それらにはジャンヌに対するモディリアーニの愛が込められているように見える。 二人が出会った1917年には、モディリアーニは裸婦像の制作に打ち込んでいて、ジャンヌを描いた絵は少ない。そんな中の一枚が、「大きな帽子のジャンヌ」と称されるこの絵だ。大きな帽子をかぶったジャンヌが、例の様式に従った構図のうちに収められているが、指を頬にあてた何気ない仕草が、この絵に特有の雰囲気を醸し出している。 (1917年、キャンバスに油彩、55×38cm、個人蔵) |
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