壺齋散人の 美術批評
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少女坐像:モディリアーニの肖像画




「少女坐像」と呼ばれるこの絵も、近所に住む平凡な少女を描いたのであろう。寒色で彩られた単純な背景のなかに、例のモディリアーニ風の様式に身構えた少女の上半身が描かれているが、顔は極度に平板化され、真黒く塗られたセーターもボリューム感を感じさせない。こういう絵は、えてして通俗的で浅墓な印象を与えがちなのだが、この絵に限ってはそんなことはない。フォルムの単純さに反比例するように、精神的なものが付加されているように感じられるからだ。

首を軽くかしげ、眼をじっとこちらに向けているので、まるで何かを語りかけてくるような気持にさせる。唇はとりあえず閉じられてはいるが、だれかに語りかけられたら、すぐにも開いて話しはじめるような予感を与える。

モディリアーニは、モデルを単なる描画の対象として向き合ったのではなく、一人の生きた人間として、したがって語りかけるべき相手として、向き合っていたのだと思う。だからこそ、こんな単純な絵にも、聊かの精神性を認めることができるのだろう。

(1918年、キャンバスに油彩、92×60cm、パリ、ピカソ美術館)





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