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ジャンヌ・エビュテルヌ:モディリアーニの肖像画




モディリアーニによるジャンヌ・エビュテルヌの肖像画は、正面をむいた半身像が多いのだが、これは肩から上を描いた数少ないもののうちのひとつ。顔をアップで映し出すことで、ジャンヌの美しさを強調したいと思ったのだろう。そんなことから、この絵にはモディリアーニ晩年の特徴である様式性が薄められ、モデルの自然な姿を再現しようとする意欲を感じる。

輪郭線のかわりに明暗対比を強調した点、髪にボリューム感を持たせたところなどが、この絵の特徴である。背景を、二つの空間に分割した点は、晩年の肖像画に共通する点だ。

この絵の中のジャンヌは、瞳と唇にポイントがある。ジャンヌの肖像画は、眼を灰色に塗りつぶしているものが多いのだが、この絵では、瞼の輪郭線も明瞭に引かれ、瞳にも現実感が漂っている。この時のジャンヌはまだ21歳の若さだったが、すでに前年の暮に娘を出産していた。

(1919年、キャンバスに油彩、55×38cm、個人蔵)





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