壺齋散人の 美術批評 |
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軽業師の家族と猿:ピカソ、子どもを描く |
1904年にピカソがパリにやってきて住みついたのは、モンマルトルの安アパートだった。詩人のマックス・ジャコブが洗濯船(Bateau Lavoir)とあだ名したこのアパートには、アポリネール、モディリアーニ、コクトー、マティスといった芸術家たちも出入りしたが、ピカソは恋人のフェルナンドとここで暮らしながら、芸術家たちとの交流を楽しんだといわれる。 この安アパートの近所にはメドラノ・サーカスが構えていて、ピカソはよくそこに出かけて行っては、サーカスの軽業師たちを描いた。「軽業師の家族と猿(Famille d'acrobates avec Singe)」と題したこの絵もそんな一枚だ。 画面中央には子どもを抱いた母親が腰をおろし、その右わきには父親が座って子どもの表情を見ている。そして母親の足もとには一匹の猿が控えて子どもの方を見上げている。この構図は、デューラーの版画「猿のいる聖家族」やラファエロの聖家族に似ていることから、ピカソがそれらを参考にしたと指摘するものもいる。 それにしても、この絵の中の家族は、あまり楽しそうには感じられない。母親の顔には喜びの感情は現れていないし、父親の姿勢にもぎこちなささが感じられる。 (1905年、カードボードにグアッシュ、水彩、パステル、インク、104×75cm、スウェーデン、イェーテボリ美術館) |
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