壺齋散人の 美術批評 |
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サルタンバンクの家族:ピカソ、子どもを描く |
サルタンバンクとは旅芸人のことで、サーカスとは違って、主に路上で大道芸を披露していた。芸人自体が社会の下層に属していたが、サルタンバンクはそのなかでも最下層に属していた。その構成員には、ジプシーが多かったとされる。ピカソは、サーカス芸人と同じく、このサルタンバンクにも関心を寄せ、生涯の節々で彼らの姿を描いている。 「サルタンバンクの家族(Famille de Saitimbanques)」と題した1905年のこの作品は、ピカソのサルタンバンク作品としては最も有名なもの。ピカソの研究者(リチャードソンなど)によれば、このサルタンバンクの家族は、たまたまメドラノ・サーカスに寄寓していたというから、これらの旅芸人がサーカス一座の暖簾をくぐることもあったらしい。 この絵の中のサルタンバンクの家族はしかし、サーカスの一員としてではなく、荒野を行く孤独な家族として描かれている。下絵には、サーカスを背景にしたものもあるから、わざとこのような構図に改めたのだと思われる。ピカソは、彼らを彼ら本来の姿で描きたいと思ったのであろう。 画面には三人の大人と三人の子どもが描かれている。その中の最も年長の男は、この家族の最長老、あるいはおじいさんなのかもしれない。不思議なことに、家族のメンバーは一人一人が勝手な方向に視線を向け、家族としての一体感を感じさせない。ピカソの描いた家族はえてして分裂を感じさせるものが多いが、この絵の中の家族もやはり、そうした分裂した家族なのだろうか。 (1905年、キャンバスに油彩、213×230cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー) |
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