壺齋散人の 美術批評
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おもちゃの馬と人形を持ったマヤ:ピカソ、子どもを描く




「おもちゃの馬と人形を持ったマヤ(Maya au cheval et à la poupée)」と題するこの絵は、マヤの一連のデフォルメ像のうち第二作目のものである。一作目の「人形を抱くマヤ」より、わずか一週間後に描かれた。この頃のピカソが、マヤに夢中になっていたことを物語っている。

一作目とほぼ同じ表情をした子供のマヤは、ほぼ正面を向いて、左手で人形を抱き、右手でおもちゃの馬を抱えている。人形の顔つきは、一作目のものより生き生きとして、まるでマヤに接吻をしているかのように見える。それのみならず、馬に跨って得意げになっているようにも見える。馬は馬で、いまにも走り出しそうである。

この絵はピカソの孫娘が所有しているものだが、2007年に何者かによって盗まれたことがある。そのさい警察は二度と出てこないかも知れないといったが、幸い半年くらい後に発見され戻された。これくらい有名な絵になると、闇市場で転売と言うわけにもいかず、犯人は自分の家の壁に飾り秘かに楽しんでいたところ、これを見た人が警察に通報したのである。世界的に有名になった絵など、盗むものではないということだろう。

(1938年、キャンバスに油彩、73.0×60.0cm、個人蔵)





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