壺齋散人の 美術批評
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ラ・グランド・ジャット島の日曜日:スーラの点描画





「ラ・グランド・ジャット島の日曜日」は、スーラにとって大展開をもたらす作品になったばかりか、ヨーロッパの絵画史に転機をもたらすものとなった。この作品によって、点描画がほぼ完成された形で示され、人々はこの絵に、印象派に続く新しい時代の夜明けを感じたのである。

点描画とは、色彩を色の点からなる集合として表現するものだ。そのことで、色彩はパレットの上で混色するよりも、高い彩度を保ったままさまざまなスペクトルの色相を表すことができる。その表現を高度なものにするためには、色彩についてのコントロールされた技法が欠かせない。このコントロールがゆるいと、色彩はただの混沌に陥る。

スーラはこの大作の制作に、「アニエールの水浴」に引き続いて取り掛かり、当初は「アニエール」の技法をほぼ踏襲しながら描いていた。彼はこの作品を1885年春のアンデパンダン展に出品するつもりだったが、展覧会が延期されたために、大規模な修正をすることとした。その年の夏に、点描画法を試行しつつあったスーラは、この作品にもその技法を応用し、既成の画面の上から、無数の色点を施したのである。それと並んで、キャンバスの四周をはぎたし、そこにも小さな色点を施した。この画面の周囲を額縁のように彩る手法は、以後スーラの特徴の一つとなった。

モチーフは、「アニエールの水浴」同様、休日をセーヌ川の岸辺でのんびりと過ごす庶民の表情である。この絵には40人ほどの人物が描かれているが、いずれも着飾って散歩したり草の上に寝そべったりして休日を楽しんでいる人々だ。

グランド・ジャット島は、アニエールのやや上流にあるセーヌ川の中州である。両岸が工場地帯になっており、そこに大勢の労働者たちが住んでいた。その労働者たちが休日になると、このようにセーヌ川の中州で思い思いの休日を楽しむわけである。



これは本作のための習作。グランド・ジャット島の人気のない風景が、点描法を用いて表現されている。

(1884-1886 キャンバスに油彩 207.6×308.0㎝ シカゴ美術研究所)





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