壺齋散人の 美術批評
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ポール・アン・ベッサンの港:スーラの点描画





1888年の夏に北フランスの港町ポール・アン・ベッサンで描いた六点のうちの一つ。こちらは、ポール・アン・ベッサンの港を描いている。その視点は、丘の上から港全体を見下ろすもので、入り組んだ崖の間に展開する港の複雑な景色が俯瞰されている。

海に突き出した桟橋の上には、漁業用と思われる上屋が立ち、その背後に漁村の家々が立ち並んでいる。桟橋の先端付近には帆を広げたヨットが描かれているが、これらはレジャー用の船だろう。

この絵にも、人物は申し訳程度に点在しているのみで、重要な役割は果たしていない。この港はいつも人であふれて賑わっていたということだが、スーラの絵からはそうした賑わいは伝わってこない。ただの風景画のように見える。

全体として、明暗差が強くない穏やかな印象を与える。画面全体に微細な色点が施され、いかにも点描画といった風情を感じさせる一点だ。

(1888年 カンバスに油彩 67.0×82.0㎝ パリ、オルセー美術館)




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