壺齋散人の 美術批評 |
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シャユ踊り:スーラの点描画 |
晩年のスーラは、サーカスやミュージックホールといった大衆娯楽施設を頻繁に訪れ、そこからインスピレーションを得ようとしていた。19世紀末のパリには、そうした娯楽施設があふれていた。そこにインスピレーションを求めた芸術家としては、スーラは先駆者の一人と言ってよい。彼に続いてロートレックやピカソが、そうしたものからインスピレーションを得るようになる。 「シャユ踊り」と題したこの絵は、モンマルトルのキャバレー、ディヴァン・ジャポネにおける踊りをモチーフにしたものだ。ディヴァン・ジャポネといえばロートレックのポスターが有名だ。ロートレックは当時の人気ダンサーで親しい女友達でもあったジャンヌ・アヴリールをフィーチャーしていたが、スーラはそのキャバレーの売り物であるカンカン踊りをテーマに選んだ。 一段高い舞台の上で、男女が脚を振り上げてカンカン踊りを踊っている。舞台の陰では豚鼻の男がかぶりつきで踊り子の脚の辺りを見つめている。この男にとって踊り子は、ストリッパーのような性的な対象なのだ。一方、舞台の下では楽団が演奏をしており、踊り子と観客との間に割って入っている。同じような構図は、「サーカスのパレード」でも採用されていた。(本作1890年 カンバスに油彩 171.5×140.5cm オッテルロー、クレラー・ミュラー美術館) これはスーラが「シャユ踊り」のための習作として、四点ほど作った板絵の一つ。やや大きめの色点で描かれている。また四方のうち三方だけが、額のように縁取られ、それぞれ違う色を施されている。(習作1890年 板に油彩 21.8×15.8cm ロンドン、コートールド美術研究所) |
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